三田・北神地域の急性期医療の確保に関する基本構想
「三田・北神地域の急性期医療の確保に関する基本構想」策定
令和4年6月に策定した「三田・北神地域の急性期医療の確保に関する基本方針」に基づき、「三田・北神地域の急性期医療の確保に関する基本構想(案)」を策定し、市民意見交換会、パブリックコメントの実施などを踏まえて、「三田・北神地域の急性期医療の確保に関する基本構想」を策定しました。
【市民意見交換会の結果について】
「三田・北神地域の急性期医療の確保に関する基本構想(案)」に関する市民意見交換会の開催結果について
【市民意見の募集(パブリックコメント)の結果について】
三田・北神地域の急性期医療の確保に関する基本構想(案)に対する市民意見の募集結果について
三田・北神地域の急性期医療の確保に関する基本構想(本編) (PDFファイル: 3.1MB)
三田・北神地域の急性期医療の確保に関する基本構想(概要) (PDFファイル: 1.5MB)
以下、三田・北神地域の急性期医療の確保に関する基本構想(概要)の抜粋
1.基本構想の位置づけ
本基本構想は、三田・北神地域の急性期医療の確保に関する基本方針に基づき、三田・北神地域の急性期医療を確保するための役割分担、財政負担、整備候補地や新病院に関する基本的な事項などを示したもの
2.基本構想策定の経緯
基本構想策定の経緯
平成27年3月 | 〇新公立病院改革ガイドラインの策定(総務省) |
平成28年10月 | 〇兵庫県地域医療構想の策定(兵庫県) |
平成29年3月 | 〇三田市民病院改革プランの策定(三田市) 事業の方向性については、「より広い医療圏で医療機能の分化・連携の推進を図ると共に急性期病床の再編統合を行うことが必要である。」とした。 |
平成29年12月 | 〇市民病院の継続的な経営に関する審議会の設置(三田市) 平成31年2月に「広域的な急性期基幹病院を目指す必要があること。」及び「地方独立行政法人(非公務員型)、または指定管理者制度のいずれかの経営形態が望ましい。」旨の答申を受けた。 |
令和元年11月 | 〇北神・三田急性期医療連携会議の設置(三田市) |
令和3年6月 | 〇北神・三田地域の急性期医療の確保に関する検討委員会の設置(三田市) 令和4年3月に、「三田市民病院と済生会兵庫県病院の再編統合が最も望ましい。」、「その際には、現在の利用者にとって交通アクセスの利便性が生じるため、両病院の中間地点が望ましい。」との報告を受けた。 |
令和3年8月~ 令和4年7月 |
〇広報さんだの積極的活用(計10回) |
令和4年1月~ 令和4年3月 |
〇市民病院に関する市民意見交換会(市内9地区計25回157人)の実施 |
令和4年6月 | 〇三田・北神地域の急性期医療確保方策に関する共同記者会見の開催 〇「三田・北神地域の急性期医療の確保に関する基本方針」策定 |
三田・北神地域のつながり
- 地理的条件
三田市と神戸市北区北神地域(以下、「北神地域」という。)は、六甲山系以北の一体的な盆地でつながっており、歴史的なつながりや神戸電鉄沿線を中心とした生活圏としてのつながりが深い。
- 兵庫県保健医療計画における位置づけ
三田市は阪神圏域(阪神北準圏域)に、北神地域は神戸圏域に属しているが、三田・北神地域はそれぞれ別の二次医療圏域でありながらも、地理的条件や患者の流出入の状況等から、圏域を跨ぐ連携が必要とされている。
- 三田市民病院と済生会兵庫県病院との医療連携
三田市民病院と済生会兵庫県病院は、両地域の急性期医療を守るために「臨床研修病院としての連携」、「災害発生時における相互医療応援に関する連携」や「医師確保のための連携(平成30年度に医師修学資金貸与制度を創設)」を行っている。
三田・北神地域の現状と課題
- 将来推計患者数
○両地域の入院需要は2040年まで急激に増加し、2020年から2040年のピークにかけて1日あたり約450人増加となる。外来需要は2030年まで緩やかに増加し、2020年から2030年のピークにかけて1日あたり約450人増加となる。
- 政策医療の現状と課題
○三田・北神地域に住所地のある患者の三田・北神地域での完結率は三田市が89.2%、北神地域が74.1%である。
○疾病ごとの完結率は脳卒中87.2%、虚血性心疾患83.9%、糖尿病81.9%、新生物62.0%、精神疾患73.5%となっており、疾病によって完結率に差がある。
- 新興感染症(新型コロナウイルス感染症等)への対応状況
○三田・北神地域内においては、三田市民病院と済生会兵庫県病院が主に新型コロナウイルス感染症の専用病床を整備して、感染症対応を実施している。
○一般患者とは完全に分離した状態で、感染症の専門的な治療が必要であること、医師をはじめとする医療従事者の安定的な確保を含む運営体制の拡充、また、専門的な器機・設備の確保などが求められている。
三田市民病院と済生会兵庫県病院の現状と課題
名称 | 三田市民病院 |
社会福祉法人恩賜財団済生会兵庫県病院 |
住所 | 三田市けやき台3丁目1番地1 | 神戸市北区藤原台中町5丁目1番地1 |
病床数 | 300床 (うちHCU7床) |
268床 |
診療科目 | 19診療科 | 21診療科 |
職員数 | 455名(R3.4.1現在) | 403名(R3.4.1現在) |
病院の 課題 |
〇施設の老朽化等 〇医師の確保 |
〇施設の老朽化等 〇医師の確保 〇経営状況 |
3.三田・北神地域に必要な医療提供体制
政策的医療への対応
項目 | 内容 |
新生物 (がん) |
・高度な治療が必要な場合や希少癌の場合は、がんの基幹病院と連携が必要。 ・域内で対応すべき主要な症例(大腸・肺・胃など)は地域完結率を高めることが必要。 |
脳卒中 | ・現在、主となり対応している恒生病院と連携しながら、増加する医療需要に対応していく必要がある。 ・連携により医療需要に対応するには、合併症にも対応出来るよう脳神経外科を保有する総合的な急性期病院が地域にあることが望ましい。 |
心疾患 | ・一刻を争う急性心筋梗塞等は現状以上に地域完結率を高めることが望ましい。 ・大動脈解離などの心臓血管外科症例についても三田・北神地域で対応が出来る事が望ましい。 |
救急医療 | ・将来需要を踏まえれば、救急搬送の受入体制を強化する必要がある。 |
小児救急・ 周産期医療 |
・小児救急及び周産期医療は将来の需要減少が見込まれるが、特に若い世代が安心して暮らすための地域において必要となる医療機能であり、不採算医療であっても確保すべき政策医療である。 |
災害医療 | ・主要道路の寸断や停電が生じた場合であっても三田・北神地域において一定の期間、適切な医療対応が行えるような施設および設備の整備について検討する必要がある。 |
新興感染症 | ・感染患者と一般患者のゾーニング を適切に行うことができること、患者対応にあたる医療従事者を確保ができることやICU等の施設設備があり重症化した患者への対応が行えることが必要である。 |
必要な医療機能(急性期医療)
〇三田市民病院と済生会兵庫県病院の推計1日平均入院患者数のうち急性期入院患者数について、ピークとなる2035年には2病院合わせた1日平均の急性期入院患者数は406人/日となる。
〇現状の地域完結率を前提にすると2035年には2020年比で+24人/日の急性期の入院患者への対応が求められることから、医師確保などの体制強化が必要である。
〇推計1日平均入院患者数のうち、急性期患者は2020年から2035年に60人増加する見込み。特に消化器、呼吸器、循環器、神経系の疾患が大きく増加することから、対応が必要である。
〇救急搬送推計では、2040年には2020年比で年間1,062件の増加が見込まれることから、救急受入体制の強化が必要である。
4.三田・北神地域の急性期医療確保方策
三田・北神地域の住民の命を将来に亘って守り抜くために、三田市民病院と済生会兵庫県病院が再編統合し、新統合病院を整備することにより、三田・北神地域の急性期医療の充実を目指す。
〇三田市民病院は「市内の急性期医療さいごの砦」として、市民の命を守る役割を担ってきた。
〇済生会兵庫県病院も北神地域の中核病院として北神地域の住民の命を守る役割を担うとともに、神戸市内唯一の地域周産期母子医療センターを持つ医療機関として、神戸市域を超え広域で重要な役割を果たしてきた。
〇両病院には、新専門医制度や医師の働き方改革への対応など、医師の確保や施設の老朽化に大きな課題がある。また今後、高齢化に伴って医療需要が増加する見込みの中で、両病院がこのまま単独で各地域の急性期医療を守り続けることは困難である。
〇これらの課題を解決し、両地域の住民の命を将来に亘って守り抜くためには、一定規模以上で安定的に医師をはじめとする医療スタッフを確保することができる基幹病院を整備し、市民の命を救うことができる体制を構築しなければならない。
〇三田市民病院と済生会兵庫県病院が再編統合した場合は、医療機能・医師確保の視点において、将来の医療需要に対応することが出来、また医師確保への対応が期待出来るものと見込まれる。また、施設整備の視点では、多額の資金を要するが、機能の向上と一定の条件を満たす場合には補助金等の活用が可能となる。さらに、経営への影響の視点では、再編統合の場合は医師の集約並びに医師の確保が行えることでより多くの需要に対応ができ、収益向上が見込まれる。
5.新統合病院の医療機能
項目 | 医療機能 |
新生物 (がん) |
・主要な症例(大腸、肺、胃など)については地域完結率を高める。 ・放射線治療、手術、化学療法など集学的な治療が行える体制を構築する。 |
脳卒中 | ・恒生病院と連携しながら増加する医療需要へ対応する。 ・合併症への対応が行えるように脳神経外科を有する総合的な急性期病院を目指す。 |
心疾患 | ・一刻を争う急性心筋梗塞等はさらに地域完結率を高める。 ・大動脈解離など心臓疾患外科を要する症例に対応できる医療機能を確保する。 |
救急医療 | ・医療需要の増加を踏まえ救急搬送の受け入れ体制を強化する。 ・救急医療の地域完結率を高め、三田・北神地域において安心して救急医療を受けられる体制を整備する。 |
小児救急・ 周産期医療 |
・小児への医療、新生児への医療、ハイリスク分娩等の妊婦への医療提供について広域的な役割を担う。 ・地域における小児・周産期における救急患者を受け入れる役割を担う。 ・周産期の合併症に対応するためにより機能を強化した体制を整備する。 |
災害医療 | ・主要道路の寸断や停電が生じても、地域で一定の期間、適切な医療対応ができる施設や設備を整備する。 ・医療従事者の確保を含め、地域の民間病院との連携を強化する。 |
新興感染症 | ・感染患者と一般患者のゾーニングを適切に行うことができる施設整備を行うとともに、ICU等の施設設備を行い、重症化した患者にも対応できるよう体制を整える。 ・患者対応にあたる医療従事者を確保する。 |
6.経営形態
現三田市民病院の経営形態(地方公営企業法(全部適用))について
〇現市民病院は、地方公営企業法の全部適用により経営されている。
〇しかし、自治体の内部組織であることに変わりなく、職員定数や予算単年度主義による契約事務並びに診療体制や給与制度等などにおいて制約があり、環境変化に対応した迅速な病院改革や収益性の向上など現状の課題解決は困難であるとの指摘もある。
新統合病院における経営形態
〇今回の再編統合の相手方である済生会兵庫県病院の優れた経営能力を最大限活用する方策として、指定管理者制度を導入することとしたものである。
〇地方独立行政法人という方式もあるが、地方公共団体とは別の法人格となる当該法人に経営主体が委ねられることとなることから、今回の再編統合のケースでは、三田市が新病院の開設者として、将来に亘って新病院の経営に対しても主体性と責任を持つこととして、指定管理者制度を選択した。
社会福祉法人恩賜財団済生会支部兵庫県済生会へ指定管理した場合の効果
○公的医療機関としての役割を発揮し、市民サービスの向上に期待できるため。
社会福祉法人恩賜財団済生会は、医療法において公的医療機関として位置付けられている日本最大の社会福祉法人であり、公としての志を持った役割に期待できる。
○全国で運営している民間的な経営手法の導入により、迅速かつ最適な意思決定による業務執行等と柔軟な組織体制の構築に期待できるため。
全国40都道府県で100以上の病院等を運営する組織であることから、そのネットワークを十分に活用し、情報交換や人材交流等を行うことで、迅速かつ最適な意思決定および柔軟な組織体制の構築に期待できる。
7.新統合病院の整備概要
整備候補地
〇三田市は、北神・三田地域の急性期医療の確保に関する検討委員会からの意見(再編統合する場合は、両病院の患者のことも考えると中間地点付近が望ましい。)を受け、市内5カ所の整備候補地について独自に調査を実施した。
〇しかし、それぞれの候補地には特有の課題がある中で、神戸市から「1.両病院の道路上の中間地点付近であること。」、「2.緊急輸送道路として指定されている北神中央線沿いであること。」、「3.病院施設を整備することができる面積を一体で確保することができること。」を理由に神戸市北区長尾町宅原の提案があり、新統合病院の整備候補地とした。
〇当該候補地は民有地であるため、地権者はもちろんのこと、当該地域住民の理解が得られるよう、用地確保の主体となる神戸市と連携し誠意を持って対応する。
病床規模
新統合病院の病床数は、400~450床とする。三田市民病院と済生会兵庫県病院が、現在の医療機能を維持した場合に対応すべき推計入院患者数に新統合病院における医療機能向上に伴う患者数の増加や医療技術の進歩に伴う入院日数短期化の影響等を加味し、400~450床必要であると考える。
財政負担の考え方
(1)整備費
三田市 | 済生会 | 神戸市 |
---|---|---|
整備費の2/3(約67%)を負担。 |
整備費の1/3(約33%)を負担。 | 新統合病院の用地を確保。 救急医療及び周産期医療に係る病床分を対象に、神戸市民の入院患者の割合を支援。 |
(2)運営費
三田市 | 済生会 | 神戸市 |
---|---|---|
政策医療等(救急医療や周産期医療など)について、指定管理料として負担。 | 全ての運営費。(三田市及び神戸市の負担分を除く。) | 救急医療及び周産期医療に係る収支不足額相当額を対象に、神戸市民の入院患者の割合を支援。 |
整備手法
病院施設の整備手法は、工期・工事費の縮減、より良い医療、快適な療養環境の提供をできる施設の品質確保を実現するために各手法の特徴を十分に勘案し、最適な整備手法を検討することが重要である。
(1) 従来方式(設計施工分離発注方式)
設計は設計会社、施工は施工会社に別々に発注する方式。
(2) DB(デザインビルド)方式(設計施工一括発注方式)
設計と施工を一括して発注する方式。
(3) ECI (アーリー・コントラクター・インボルブメント) 方式
設計は設計会社が行うが、実施設計段階から施工者が技術協力者として関与する方式。
今後のスケジュール
令和 4年度 |
令和 5年度 |
令和 6年度 |
令和 7年度 |
令和 8年度 |
令和 9年度 |
令和 10年度 |
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基本構想 | ||||||||||||||
基本計画 | ||||||||||||||
用地調査・確保 | ||||||||||||||
設計 | ||||||||||||||
建設工事 | ★ |
★印=開院 ※本スケジュールは、事業の進捗状況により変更する可能性がある。
8.関連事業
現三田市民病院の跡地活用
現市民病院の跡地には、在宅復帰に向けたリハビリテーション等の医療を提供する回復期医療の民間病院の誘致と市休日応急診療センターの移設検討に加えて、地域完結型の医療提供体制の構築に向け、医療・福祉分野(例えば、緩和ケア等)も含めた跡地活用について、サウンディング型市場調査を実施しながら、今後検討を進める。
〇三田市が目指しているのは、「将来的にも現在と変わらず、市民がこの地域で安心して医療を受け続けられること。」であり、具体的には、急性期医療、回復期医療、慢性期医療の全てのステージにおいて、市民が安心して医療を受けることができる体制を構築していくことである。
〇これを実現するためには、三田市民病院と済生会兵庫県病院の再編統合により急性期機能を充実させることと合わせて、その受け皿となる回復期医療や慢性期医療にも対応しなければならない。
〇特に、回復期医療については、今後の高齢化に伴い医療需要が増加する見込みである一方、市内の回復期病床は60床のみである。
〇そこで、在宅復帰に向けたリハビリテーション等の医療を提供する回復期医療の民間病院の誘致と市休日応急診療センターの移設検討に加えて、地域完結型の医療提供体制の構築に向け、医療・福祉分野(例えば、緩和ケア等)も含めた跡地活用について、サウンディング型市場調査を実施しながら、今後検討を進める。
交通アクセスの充実
三田市民の新病院までのアクセス条件について、運賃や距離、ルートや頻度など様々な地域の実情等の地域特性にも配慮しながら、今後の交通を取り巻く新たな技術の動向も見据え、あらゆる選択肢を想定し、病院利用者にとって望ましい対応を行う。
〇三田市民の新病院までのアクセス条件について、運賃や距離、ルートや頻度など様々な地域の実情等の地域特性にも配慮しながら、市内全域で均衡の取れたものとなるよう、検討を進める。
〇具体的な対応策としては、例えば、予約型の送迎バス(デマンド型交通)の導入や交通事業者等との連携によるバス路線の利便性向上などが考えられるが、ICTを活用した移動や医療との連携など、今後の交通を取り巻く新たな技術の動向も見据えながら、あらゆる選択肢を想定し、病院利用者にとって望ましい対応を行う。
〇なお、対応策は、三田市の公共交通のマスタープランである「三田市地域公共交通網形成計画」と連携・整合を図りながら具体的な検討を進める。
9.新統合病院開院までの取組
〇新統合病院の開院時期は令和10年度の予定であるが、それまでの間においても、両病院の診療機能を維持するとともに、新統合病院の円滑な運営に向けた準備を進めていく必要がある。
〇具体的には、例えば、医療資源等の適正配置や人材交流、医療機器や各種システム等の更新時期の調整などが考えられる。
〇また、令和6年度には医師の働き方改革が本格的に開始されるため、両病院でその対応策について、早急に検討を進める。
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更新日:2022年12月08日